「ネットと日本のメディアの未来」をテーマにしたイベント「WIRED Session:Future of Work」が開催され、世界最大のニュースサイト「ザ・ハフィントン・ポスト」日本版編集長・松浦茂樹氏と「WIRED」編集長・若林恵氏の特別対談に参加してきました。
ザ・ハフィントン・ポスト(以下ハフィントン・ポスト)もWIREDも、個人的にいつも注目しているメディアですし、両者が揃ったイベントは今回が初めてとのこと。2,000円の有料イベントだったのですが、チケットもすぐに完売してしまったようなので、5月7日にローンチ予定の日本版ハフィントン・ポストの話を中心に、簡単にまとめてみようと思います。
<参考URL>
3夜連続トークイベント「WIRED Session:Future of Work」開催
http://wired.jp/2013/03/22/wired-session/
本家ハフィントン・ポストは、アメリカ発の「ソーシャルニュースサイト」です。最近では1ヶ月で1000万件以上ものコメントがつくという、まさに世界最大級のオンラインメディアでしょう。今年2月に開催されたソーシャルメディアウィーク東京2013では、CEOのJimmy Maymann氏が来日講演を行い、5月7日に日本版ハフィントン・ポストをローンチすることを発表してかなり話題になりました。
【CEOのJimmy Maymann 氏による来日講演動画】
アメリカで最も成功したニュースサイト「ハフィントン・ポスト」
その成功の鍵と戦略
実況中継ツイートのまとめはこちら→ http://togetter.com/li/459280
そして5月、いよいよ日本版がローンチとなるわけですが、編集長に就任したのは松浦茂樹氏。ライブドアでは BLOGOS(ブロゴス) 、GREEでは GREEニュース などに携わり、 WIRED日本版 や TechWave の立ち上げにも参画していた方です。紙媒体メインの若林さんと、ウェブメディア出身の松浦さん。お二方がそれぞれ違った経験をお持ちだったので、その異なった立場からのお話が非常に興味深かったです。
<参考記事>
Huffington Post日本版の編集長はネットニュース出身者
http://jp.techcrunch.com/2013/03/06/jp20130306japanese-version-huffington-post-editor-in-chief/
また日本版ハフィントン・ポストについても、「本家の機能は全部つける」と松浦さんがおっしゃっていたので、ゲーミフィケーションの仕組みが現れたり、ニュースをパーソナライズできたり、自分のサイト上での行動を分析できたりといったものは全て対応するのだと思いますが、少し残念だったのは、本家ハフィントン・ポストの目玉ともいえるコメントシステムに搭載されている「JuLiA(Just a Linguistic Algorithm)」という人工知能解析エンジンについては、日本版は非対応とのこと。
JuLiAは、人間のモデレーターによる判断結果を記憶してパターン化し、大量のコメントを分析、進化するコメント解析システムで、自動的に不適切なコメントをふるいにかけたり、人気のコメントを見つけて強調することもできるものです。本家ハフィントン・ポストに寄せられる膨大な量のコメントのクオリティは、JuLiAによって維持されており、欠かせない存在であることは間違いありません。目玉のJuLiAが非対応というのは…
しかし、松浦さんもおっしゃっていた言葉が印象的でした。
「なんとか頑張ります。」
本家ハフィントン・ポストにおいては、30万件のコメントがあれば、掲載するのはそのうち20万件で、10万件は不採用になっているそうです。その一部は自動的にふるいにかけて落とされているものの、なんと7万件は手作業で落としているとのこと!ネット空間に健全な言論をもたらすためには、こういう根性というか、メディアの信念が重要なんだなぁと改めて実感しました。
<参考記事>
世界最大のニュースサイト「ザ・ハフィントン・ポスト」を支えるテクノロジーの秘密
http://wired.jp/2013/03/29/huffpost-jimmy-mayman/
商業的なオンライン・ニュースサイトとして初めて、ジャーナリズム最高峰のピューリッツァー賞を受賞したハフィントン・ポスト。松浦さんが繰り返していた「Right or Wrong(正論か否か)」。ポジティブな言論空間をもたらすべくローンチされる日本版が本当に楽しみです。5月7日まであと1ヶ月と少し!
そうそう、若林さんによる松浦さんへのインタビューも掲載されているWIREDのVOL.7「未来の会社 〜これからの「働く」を考える〜」もよろしければぜひ。